茶道炭、または茶の湯炭は、茶道の重要な要素の一つであり、お茶を点てる際に不可欠な役割を果たします。ここでは、茶道炭について詳しく紹介しましょう。
茶道炭(茶の湯炭、お茶炭)とは
茶道における炭、通称「茶の湯炭」または「お茶炭」は、茶道の炉や火入れ、香炉などで使用される黒炭の一種です。この茶の湯炭は、季節や流派によって異なる規格が定められており、夏の風炉用と冬の炉用に大別されます。茶の湯炭は、炭材として椚(くぬぎ)、楢(なら)、樫(かし)、躑躅(つつじ、枝炭)などが使われますが、特に火力が強く美しい断面を持つ「椚」が好まれ、その断面の美しさから「菊炭」とも称されます。
茶道炭の有名産地
茶の湯炭で有名な産地として、関西地方では池田炭、関東地方では佐倉炭が知られています。池田炭は大阪の地名に由来し、佐倉炭は江戸時代に千葉県佐倉市周辺で佐倉藩が集荷を行っていたことからその名が付けられました。しかし、これらの地域では現在、生産地や集荷地としての役割は衰退し、主要な産地としては関東以北の地域、特に栃木県や福島県周辺が挙げられます。
茶道炭の役割
茶道炭は、茶を点てる際に使用されます。お湯を沸かすための燃料として利用され、お茶室での茶道の儀式において、水を沸かす重要な役割を果たします。茶道では、茶碗や茶杓、茶筅などの道具とともに、茶道炭も精緻に取り扱われ、茶の湯を点てるプロセスにおける静寂と美しさを演出します。
茶道炭の種類
茶道において、季節に応じて異なる炭を使用することが一般的です。炉と風炉という異なる茶道具を使用する季節ごとに、適した炭の種類や寸法があります。
炉用の炭
炉は11月から4月までの期間に使用され、湯を沸かすために使われます。
炉用のくぬぎ炭は風炉用に比べて大きく、寸法が大きくなります。
炉用の炭は火力をしっかりと確保し、茶道の儀式において湯を沸かすのに適しています。
風炉用の炭
風炉は5月から10月までの期間に使用され、風炉の季節とされています。
風炉用のくぬぎ炭は寸法が小さく、風炉に適したサイズです。
風炉用の炭は、風炉で火を入れ、釜を掛け、湯を沸かすのに使用されます。
主な茶道炭の種類と大きさの一覧表
茶道において使用される炭は、季節に応じて大きさや形状が異なり、それぞれに特定の名称があります。これらの炭は、炉(11月から4月までの期間)と風炉(5月から10月までの期間)の二つの時期に使い分けられます。以下に、主な茶道炭の種類とその大きさを示します。
炭 名 | 長さ×太さ | |
炉(11月~4月) | 風炉(5月~10月) | |
胴炭(どうずみ) | 1.5cm×6.15cm | 12cm×4.2cm |
丸毬打(まるぎっちょ) | 7.5cm×4.6cm | 6cm×3.5cm |
割毬打(わりぎっちょ) | 7.5cm×4.8cm | 6cm×3.8cm |
丸管炭(まるくだずみ) | 15cm×2.6cm | 15cm×2.2cm |
割管炭(わりくだずみ) | 15cm×3cm | 15cm×2.3cm |
添炭(点炭、止炭)(てんずみ・とめずみ) | 7.5cm×2.6cm | 6cm×2.5cm |
輪胴(わどう) | 6cm×7cm | 4.5cm×4.8cm |
香合台(こうごうだい) | 7.5cm×5.2cm | 6cm×4cm |
枝炭(2本立て、3本立て)(えだずみ) | 18cm | 15cm |
茶道炭の製造と歴史
茶道炭は、室町時代に茶道が発展する過程で生まれました。当初、武具の製造に使用されていた黒炭の製造技術が茶の湯に適用され、茶道炭が生まれたとされています。茶道炭の製造技術は、茶道の発展と共に洗練され、茶人たちによって改良されました。特に千利休などの茶人は、茶道炭の製造技術に大きな貢献をし、茶道の儀式において茶碗の下に敷く灰を特別な方法で作り上げました。
茶道炭は、茶室での儀式の中で使われるだけでなく、その美しさと歴史的な背景から、日本文化の一部として高く評価されています。茶道炭は、茶の湯の世界での儀式や体験を通じて、日本の伝統と美意識を感じることができる貴重な要素です。茶の湯を楽しむ際に、茶道炭の重要性とその歴史に思いを馳せることで、日本文化の奥深さをより深く理解することができるでしょう。
茶道炭は茶道の儀式や茶室内でのお湯の沸かしにおいて、美しさと機能性を兼ね備えた特別な炭として使われ、茶道の奥深さと美しさに貢献しています。
美しい茶道炭の条件
美しい茶の湯炭を作るためには、特定の条件が必要です。これらの条件は、炭の品質や外観に大きな影響を与えます。美しい炭材は以下の要素を持っています。
真円に近い断面
炭になったとき、断面ができるだけ真円に近くなることが望ましいです。この円形の断面は、茶の湯の炭斗や火入れにおいて美しい火を生み出すために重要です。
樹皮の密着
炭になる際、樹皮が炭材にしっかりと密着していることが理想的です。密着した樹皮は、炭の品質を高め、美しい外観を生み出します。
適度な皮の厚さ
皮の厚さが適度であることが重要です。厚すぎると炭の品質に影響し、薄すぎると炭が崩れやすくなります。適切な皮の厚さを持つ木材が選ばれます。
放射状のヒビと年輪
炭を焼いた際に、放射状のヒビと年輪が均等に円の中心から広がっているのが良いとされています。これが美しい円形の断面を形成し、茶の湯炭の特徴となります。
一方で、成長が早い木や日当たりが悪すぎる木、均等でない日当たりを受けた木は、茶の湯炭に適さないことがあります。これらの条件を考慮して、適切な炭材を選び、美しい茶の湯炭を製造するための工程を進めます。
茶道で茶道炭を使用する炭点前(炭手前)
茶道において炭点前(すみてまえ)は重要な要素の一つであり、茶会の儀式の中で行われます。炭点前は茶道の進行において、湯の温度を調整し、茶を美味しくいれるために欠かせない作業です。以下に、炭点前についての詳細を説明します。
炭点前の概要
炭点前は、茶会の中で茶釜の湯を沸かすために、風炉や炉に炭を追加する作業を指します。
茶道では、客を招いてお茶を点てる前に、炭点前を行います。
炭点前には、初炭(しょずみ)と後炭(ごずみ)の2つの段階があります。
初炭(しょずみ)
初炭は、茶道の儀式の冒頭で行われます。
亭主が炭斗(すみとり)から炭を取り出し、風炉や炉に追加します。
この段階で、湯の温度を上げるための火力を調整します。
客がいる場で初炭を披露することが一般的で、客に炭点前の様子を見せます。
後炭(ごずみ)
後炭は、濃茶(こいちゃ)を点てた後、次の薄茶(うすちゃ)を点てる前に行われます。
これにより、湯の温度を保ち、次の茶の湯を点てる準備を整えます。
炭点前の歴史
炭点前は、茶道の歴史の中で重要な役割を果たし、発展してきました。
初めは客の前で披露するものではなく、亭主の「裏の仕事」とされていました。
しかし、千利休の時代になると、炭点前が客前で行われ、茶道の一部として位置づけられました。
千利休以降、炭点前はさらに洗練され、茶道の美的な要素の一つとして成長しました。
炭点前は、茶道の儀式において湯の温度を調整し、茶を点てるための重要な役割を果たしています。その歴史と伝統は茶道の奥深さを示すものであり、茶道の愛好者にとって重要な要素の一つとなっています。
まとめ
この記事では、茶道で使用される茶道炭について詳しく紹介しました。最後までお読みいただきありがとうございます。炭のことなら「修洋商事株式会社」におまかせください。
製品の購入や質問はお問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。
コメント